第50章 出会い
綴から脚本を渡され読み合わせに参加させてもらっためぐ。読み合わせ中もノートに頻りにメモをしていく。
左京『全員経験ゼロの状態だ、今日は仕方ないが明日以降はきっちり稽古するからな。台詞は頭に入れておけ』
解散後に左京に話しかけた。
「この後、幸と衣装の相談をします。夜にはラフ案までは出せるので時間作ってもらえませんか?」
左京『わかった。夕食後に談話室でいいか?』
「はい、じゃあまた後ほど」
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幸『これが今回のラフ案。世界観的にもヴィンテージ感は外したくない。特に今回は身長高い奴ばっかりだから素材もこだわらないとチープになる。』
左京『それにしたってこの予算はかけすぎだ』
幸『衣装作りに関して指図は受けないから』
左京『わかってんのか?今この劇団は借金まみれなんだぞ。毎公演にこの予算はかけすぎだ。コストがかかりすぎてる』
幸『でも衣装を手を抜いたら観客だってわかるよ!』
左京『もう少しコストを下げろ!これじゃいつまで経っても借金返せねーぞ!』
両者一歩も譲らない状況に周りにいた団員達もたじろいだ。するとそれまで幸の隣で黙っていためぐが立ち上がった。
「左京さんの言いたい事はわかります。監督からこの劇団の現状は聞いています。ただこちらの言い分もわかっていただけませんか?左京さんもわかってるはずですよね。微々たることも手を抜けば見抜かれること」
左京『だったら俺が納得する案をもう一度出してみろ』
「その必要はありません。左京さんはこの案で納得しているはずですから」
左京『何?』
左京本人も周りの団員も正直言っている意味がわからなかった。さっきまで幸の案を頑なに拒んでいたのに既に納得しているというのはどういうことなのか。
「左京さんが聞きたいのはこの公演のこの衣装にこの予算を出すことでどれだけのメリットがあるか聞きたいんですよね?」
幸『それって、』
「確かに、さっきの幸の説明では結果論だけでメリットがほとんど伝わっていないと思います。そこを再度説明します。もう一度聞いていただけませんか?」
幸『めぐ…』
左京『いいだろう、瑠璃川。もう一度提案してみろ』
幸『…わかった。今回の新生秋組の公演は、』