第2章 映し鏡(佐伯)
「上手だねー。前にも折り紙してたことあったっけ?」
「ううん、初めてだよ。でも、こうだよーって教えてあげるとすごく上手に折れるんだよ」
「へえ」
弟と私が話し始めると、少女《プランツ》たちはすっと離れていった。
ヘイゼルは弟に貼り付き、エメラルドはまたラグの上で折り紙を始める。
思うんだけど、少女《プランツ》たちって、弟のことが大好きなのよね。
私に笑いかけてくれたり、ハグしてくれたりするけど、やっぱちょっと温度差感じるというか。
ヘイゼルなんてほんとに弟べったりだし、エメラルドはそこまでじゃないけど私にいつもよってきてくれるわけでもないし。
過ごす時間の違いなのかな。
弟からしたら、なんかちょっと違うみたいで「エメラルドはお姉ちゃんのこと大好きだよね」って言ってくるけど、そうかあ?って感じ。
今日だって、ほら、すぐ離れていっちゃうじゃない。
自分の部屋で鞄の片付けと着替えだけ済ませて、弟の部屋に戻ってくると、弟と少女《プランツ》はまた3人で遊んでいた。
折り紙は終わったみたいで、今度はトランプをしてるみたい。
うーんってうなったり、けらけら笑ったりしてるのは弟だけだけど、3人ともがぴかぴかの笑顔の部屋は、空気までぽかぽかしてるみたいで、
私は、そっと扉を閉めた。
* * *
珍しくいつまでたっても起きてこない娘の部屋の前で、私は少し困っていた。
ノックにも応答がない。
寝ているだけかしら?
それとも体調が悪い?
すぐにでも扉を開けて覗いてしまえばいいのだと思うけれど、最近の娘はどこかいらいらしていた。
少し様子をみて、続くようなら話を聞いてみようかと、夫とも話していたところだったけれど……
「アリス、どう?」
「全然返事なし。……開けていいものかしら」
「うーん」
この人も、判断しかねてるみたい。
娘はこれまで、どちらかと言えば「いい子」だった。
いつまで経っても作法や言葉遣いが身につかないところはあったけれど、明るく闊達で成績もよく、体も丈夫に育ってくれた。
何より、体の弱い息子のことを、いつだって気にかけて、世話をしてくれていた。