第3章 目を引くもの
その場にいた受験者たちが一目散に逃げる。
圧倒的なそれを目の前にした人間の行動は正直だ。それに挑むな、関わるなと本能が警告した。
「まぁ、誰だって逃げるよあんなの」
逃げ惑う集団を文字通り高みの見物をしている彩希は、どう対処しようかと腕を組む。
「全員が逃げ切ったらビル倒して動き封じるか……ん?」
"ギミック"の近くに誰も居なくなったのかと思いきや、尻もちをつきその場で動けなくなっている者がいた。
「あいつ…」
先程から目に付く少年だった。彩希は思わず敵<ヴィラン>との距離を詰め、迎撃態勢を取る。
「そこのモサモサ頭の君~!動けるなら逃げろよ、君が相手できるような奴じゃないから~!」
彼に向かってそう吠えれば、後ずさりながらも他と同じように逃げようとしている。
それを見てため息をつき、他に負傷者や逃げ遅れた者がいないか辺りを確認した。
「いった…」
「ん?」
騒音に混ざり女子の声が聞こえる。見れば瓦礫で足を挟まれ、その場で動けずにいた。
すぐに退避できるよう浮遊しながら彼女に近づく。
「待ってて、今瓦礫をどかすから」
「あ、危ない…!」
しかしやはり隙が生じたか。女子の声に反応が遅れ、"ギミック"が腕を伸ばし彩希を捕獲した。
「うわっ」
身動きが取れない程の力が込められている。腕もまとめて捕らえられているため、意識が対象に行きづらく上手く"個性"が発動されない。
敵の巨大すぎるキャタピラーが動けない女子に迫りくる。
どうしようかとやけに冷静な頭で考える。あくまでこれは試験であり、負傷者は出ても死者はでないからだ。ならば見捨てても良かったのだが、それでは"ヒーロー"らしくない。
だがこの状況を覆すには、あと一手たりない。
そしてその一手が、自分から飛び込んできた。
「えっ!?」
高く跳び上がる人影。その超人的な脚力は勿論"個性"によるものだった。
その人影はビルを軽々と跳躍し、右腕で敵の正面を。
殴った。