第3章 目を引くもの
「やぁ、遅かったね」
頭上からの声に皆が上を向く。そこには透明な板に足を付いているような、そんな錯覚を感じるくらいの自然体で、宙に浮いている人物がいた。
「あいつ、私服のやつ……」
誰かが呟く。そこにいたのは、校門前でも説明会でも悪い意味で目立っていた彩希だ。
舐めていた飴をかみ砕き、棒の部分を吐き捨てる。しかしその棒はただ落ちることはなく弾丸のような軌道と速さで集団の後ろにいた敵<ヴィラン>を貫き、沈黙させた。
「3ポイントが…何体やったっけ、まあいいや。1と2は近付いたら自動で追従してくるから気をつけて。じゃあね」
呆然としている彼らにそう言い捨てその場から立ち去る。一瞬間が空いたが、他の者達も気を取り直しポイント争奪を開始する。
試験開始から5分が経過しようとしていた。さすがにそれほど時間が経てば、皆我先にとポイントを稼いでいる。
ビルの屋上よりもさらに数メートルの空中を移動し、高所から標的を確認している彩希は他の受験者の様子もうかがっていたいた。
すると目に付いたのは例の少年。仮想敵〈ヴィラン〉の残骸の中を走っているところを見るに、まだポイントを稼げていないのだろう。
「…あんな奴もいるんだな」
彼の必死の形相に、そんな感想がこぼれた。
だが時間はわずか。彼が合格する事はないだろうと目を離す。その瞬間、何かが崩壊するような音と、土煙が立ち上がる。
揺れる地面。ビルに落ちる大きな影。騒音を立てるキャタピラーが、邪魔だと言わんばかりに街灯や周辺の建物を破壊している。
「はは…っ、あれが言ってた"ギミック"か…!」
あまりの規格外の大きさに思わず笑いが零れる。
"ギミック"が拳を地面に振り下ろせば、たちまち土煙と暴風が舞った。