第3章 目を引くもの
地下鉄を乗り継ぎ数十分。目的地であり、試験会場である国立雄英高等学校に彩希は足を踏み入れた。
◆目を引くもの◆
さすが名門、そして国立といったところだろうか。敷地、校舎ともに果てしなく大きく、広い。
周りには彩希と同じく受験生が校舎へと入っていく。それに続き自らも校門をくぐり入っていくが、先ほどから周りの視線が刺さる。
それもそうだろう、他の受験生は自分の中学校の制服を着ているが、彩希だけは私服だからだ。
「なんだあいつ」
「よく試験会場に私服で来れるね」
「完全に舐めてんだろ」
(…聞こえてるんだよ)
もしくはわざわざ聞こえるように言っているのだろうか。だとしたら随分低俗だと鼻で笑った。勿論わざと向こうが気付くように。
しかしこの場で騒ぎを起こすほど馬鹿ではないのだろう。舌打ちをし、じっとこちらを見ていただけだった。
何もなかったように校舎へ進む。途中、気合が入りすぎたのだろう癖毛の男子が転びそうになっているのを見たが、通りかかった女子が助けていた。
興味なさげにその横を通り、本日2つ目の溶けかかった飴をかみ砕いた。
『今日は俺のライヴにようこそ――!!!エヴィバディセイヘイ!!!』
爆音と静寂。
よく通る声は首のスピーカーによってさらに拡散され最後列まで確実に届いているのだが。
『こいつぁシヴィ――!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクっとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?』
誰一人それに乗らず、更に静まる空気。
(誰なんだあの人)
くあ、と興味なさげに欠伸をする彩希。
横目で隣を見れば、校舎前で転びそうになっていた少年が目を大きく見開き震えている。
「ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』だ、すごい…!!ラジオ毎週聞いてるよ、感激だなぁ雄英の講師は皆プロのヒーローなんだ」
やけに大きい独り言が彩希の耳に入る。
「君、ヒーローに詳しいんだね」
「ひぇっ!?あ、いえそんなことないですよ彼は有名ですしラジオもやってて…」
「ああ、うん、もういいよ」
自分から話しかけたのだが、長くなりそうだったので彩希は思わず話を切ってしまった。更に隣の目つきの悪い男子がうるさいと呟く。