第8章 それは熱を持つ
その後も特に目立った問題点はなく、個性把握テストの全種目は終了した。
「んじゃパパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」
トータル最下位が除籍。冒頭で言われた言葉を振り返り生徒に緊張が走る。
特に記録らしい記録がボール投げだけの緑谷の表情は暗い。
端末から映し出される結果。1位、2位、3位と続く。
(4位か……緑谷君は…)
彩希の名前は爆豪と飯田の間にあった。それを確認し、すぐさま緑谷の名前を探せば、21位の、最下位。
「ちなみに除籍はウソな」
数秒の間。生徒全員が目を丸くして言葉を失っている。
その様子を見て相澤はニヤリと笑った。
「君らの"個性"を最大限引き出す合理的虚偽」
「「は―――――――!!!???」」
あまりの事実に声を上げ驚く。緑谷に至っては驚きすぎによる衝動で物理的にぶれている。
「あんなのウソに決まってるじゃない…ちょっと考えればわかりますわ…」
テスト1位の八百万が驚いている面々にため息を吐く。
「これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ」
そう言って相澤は立ち去る。その時に緑谷へ保健室の利用書を渡していた。
「……終わった」
生徒が続々と教室へ戻る中、ひとり彩希は立ち尽くしている。
精神的な緊張が解け、一気に体の力が抜けた。
(あ…これ)
視界に映る木々や地面、建物が歪む。
そういえば、と、長時間の"個性"の使い過ぎで発熱しているのだと思い出した。
「彩希ちゃーん、戻ろー?」
少し先で麗日が彩希を呼んでいるが、その少し先が遠く感じた。
「今行くよ」
そう発したはずなのだが、この声は出ているのか。彼女は他に何か言っているのだろうか。自分の声も他の音もよく聞こえなくなっている。
足を一歩踏み出し、もう一歩の足を上げようとした瞬間、体が傾く。
やけに冷静な頭で倒れたら痛いだろうなと他人事のように思い、地面との衝突に彩希は目を瞑った。
「大丈夫か」
だが痛みはなく、地面に倒れてさえもいない。