第7章 最初の試練
「俺は切島鋭児郎、よろしくな特待生!」
「東動彩希だよ、よろしく」
「おう!それにしてもすげぇ"個性"だなー」
「そう?物を触らずに触ってるようなものだけど」
「あー…意外となんか、アレだな」
「…地味?」
言葉を濁す切島に、彩希は答えを先に言った。
「わ、わりぃ!でも使い方は派手だよな!」
「いいよ、地味な"個性"だって自覚してるし」
「いや、俺の"個性"も地味だから、ちょっと親近感というか…」
そう言って切島は腕に力を込めると、岩石のように固くなり、指先も鋭利な刃物のようになる。
「硬くなる"個性"?」
「そ。そんだけの"個性"。地味だろ?」
自虐気味に彼は笑ったが、彩希は首を横に振り、切島の手を取る。
「そんなことない、君の"個性"は誇れるものだよ。攻めにも守りにも、どんな状況にも対応できるのは凄いことだ」
「東動…お前、めっちゃ良い奴だな…!!」
切島は硬化を解いて彩希の両肩を掴み、目を潤ませ感動している。
「勘違いしてたぜ…特待生だから偉ぶってるとかスカしてるとか思ってて悪かった!スマン!!」
「そんなふうに思われてたのか…気にしてないからいいよ」
「マジかよ!漢らしいぜ東動!」
「せめて紳士的と言ってほしい待って揺らさないで酔う」
興奮気味に掴んだ肩を前後に揺らせば、同時に頭も揺れ三半規管が刺激され彩希の顔が青くなる。それに気付き、切島は慌てて肩から手を離した。
「ゔぇ…っ」
「ホント何度もスマン…」
「いいよもう…ほら、次の種目だってさ…」
口を押えながらグラウンドへと歩き出す彩希の後を切島は追う。
(あれ、そういえば…)
ふと、彩希の肩に触れたときを思い出し、自身の両手を見つめる。
(なんか熱かったな、あいつの身体)
体操服越しでもわかる温かさに、常人よりも体温が高いのだろうかと首をかしげたが、それ以上に追及することもなく彼は次の種目へと向かった。