第7章 最初の試練
そのままゴールへ跳んだ、否、飛んだ。
強化型の"個性"で筋力を使い跳んだのなら、重力を受け軌道は弧を描き、わずかだがタイムロスになる。しかし彩希は戦闘機のように一直線にゴールへと到達した。
あまりの速さで慣性が効いているのか、ゴールを切ってもその場で止まれずに数m先でまだ宙を漂っている。
「うぇ、口に砂入った…あれ、タイム何秒って言ってました?」
「0秒86だ」
「ありがとうございます」
地面に足を降ろし頭を下げ、次の種目へと移る。
そして彼女の"個性"を見ていた生徒たちは驚きを隠せずにいた。
「凄い…東動さん…」
「…入試で彼女の"個性"を間近で見たが、あれほど速く動けるとは…」
同じ試験会場だった緑谷と飯田は、彩希の"個性"がどんなものかは曖昧であれ知っていた。しかし。
「単純だから、応用が利くんだ…」
その応用を使いこなせている事実が、二人は自身との実力差を目の当たりにしてしまった。
第2種目:握力
場所は移動して体育館内。数名でグループに分かれ握力計を使いまわしている。
「すげぇ!!540キロって!!あんたゴリラ!?タコか!!」
「タコって…エロいよね…」
多腕を持つ生徒が片手全ての腕を使い、驚異的な数値を出した。
彩希が横目で緑谷を見れば、自分の記録に納得がいっていないような、焦っているような顔をしている。
(あの超パワーは使わないのか…いや)
使わないのではなく使えないのだろう。入試の時の怪我を見るに、彼は自身の"個性"を使いこなせていない。
ひとつひとつの種目にあの全力の"個性"を使っていては彼の身がもたないだろう。
(もう少し様子を見よう)
握力計の持ち手に力を意識させる。すると指を引っ掻ける部分がゆっくりと動き出し、記録が計測された。
「203か、小さいと加減難しいんだよなぁ」
「いや十分すげーって!」
「そう?というか君誰だい?」
一緒に計測していた、赤髪を逆立てた少年が彩希にの数値を見る。