第4章 衝撃と終劇
周辺は落ち着いたのか、他の受験者たちがぞくぞくとその場を囲む。
「あいつ、なんだったんだ?」
誰かがそう発言すれば、火蓋を切ったようにその場がざわつく。
「いきなり"ギミック"に飛び出したりして…」
「増強型の"個性"だろうけど…規格外だ」
「けどあんな"個性"持っておいて、どういう生き方すりゃあんなビクビクできるんだ?」
「他を出し抜くための演技じゃねえ?」
「出し抜いて恩恵があったようにはみえねぇけど」
「とりあえずすげぇ奴だってのは間違いねえよ」
「あと私服のやつ何やってんだ?」
「さあしらね」
少年の個性に皆が疑問に思う中、ひとり遠目から状況を把握している、あの眼鏡を掛けた男子がいた。
(そこじゃないだろう、見ていなかったのか!?奴等は、あの二人は、あの女子を救わんと飛び出したんだ!!)
残り時間、自身の身の安全、合格に必要な要素を天秤にかけ、躊躇いもなく二人は飛び出した。
(試験という場でなかったら当然!!僕もそのようにしていたさ!!!)
歯を食いしばり眉間に皺を寄せるが、試験、当然という単語に引っかかりを感じ口元に手を当てた。
「はいお疲れ様~~」
すると、この場に不釣り合いな柔らかい声色が聞こえた。
「お疲れ様~~お疲れ様~~ハイハイ、ハリボーだよハリボーをお食べ」
小柄で、注射器をかたどった杖をつきながらお菓子を振りまく老婆があらわれた。
「あのマドモアゼル、雄英の屋台骨だ」
ベルトを着け派手なジャージを着た受験者が老婆を指さす。
彼女は倒れている少年と彩希の方へと近付いてきた。
「おやまぁ、自身の"個性"でこうも傷付くかい…」
「…リカバリーガール…でしたっけ」
"癒し"という、希少な個性を持つヒーロー。
雄英が無茶苦茶な入試を敢行できるのも、彼女に依る所が大きいためである。
「まるで"個性"と身体が馴染んでないみたいじゃないか。あんたも後で手ぇ見せな」
「いえ、大丈夫です…彼をお願いします」
彩希が血を垂らしていた患部を見ると、既に負傷した右腕はもとに戻っており、彩希自身がつけた掌の傷は跡形もなくなっている。
「あんた…」
「…できれば内密に」
しぃ、といたずらっぽく人差し指を唇にあてれば、彼女は深くため息を付いた。