第4章 キスからはじめようと言いますのは
ざばっとお湯が溢れる。
「入浴剤とか入れよっか?」
「どんなのがある?」
「固形のと液体のがあるんだけど...液体でいい?これなんだけど」
固形のは風呂場の外にあるから取りに行くのが面倒臭い。
「いいよ!それ、何と何?」
「クリーミーフローラとクリーミーベリー」
「めちゃめちゃクリーミーじゃん。フローラがいいな」
腕を伸ばして下の方に置いてあった容器を取った。
「んふ。了解。雅紀手ぇ出して」
「んー?こう?」
両手をお椀のようにして俺の前に出す。
容器の腹を押して出てきた液体を雅紀の手に流す。
真っ白な液体がどろりと長い指を這う。
「うーわ、めっちゃエロいねぇ」
「翔ちゃんてば...」
雅紀が手をお湯に沈めると、ゆっくり液体がお湯に馴染んでいった。
「んで、それを掻き混ぜる」
「はーいっ」
ぐわんぐわん腕を回して、透明なところを少なくしていく。
「これね、使ってると肌とぅるとぅるよ」
「へええ!あっ、ほんとだ!すべすべ〜」
CMで女の人がやってるみたいに、腕を出してするっと一撫で。
半透明の白が腕から落ちていく。
指使いすら色気を感じる。
「翔ちゃんいつも乾燥してるから。ちゃんと浸かって?」
雅紀はそう言って俺の肩を優しく押して沈める。
俺の首にお湯がかかったのを見るとあったかく笑った。