第2章 僕が手品をがんばる理由
貴方がゆっくりと顔を離す。
「ねぇにの、俺も好きだったの。ずっと…」
くしゃくしゃの笑顔とダイヤモンドのような涙。
そんな涙が俺の頬に落ちた。
「その笑顔すきだよ。相葉さん。」
泣かないでとは言えなかった。
泣いてる貴方も涙もきれいで見ていたかったから。
二人で手を繋いでソファに座った。
「ね。ランデブーとアバンチュール、どっちがいい?」
「ばか、いきなりすぎるよ…」
「いいから。意味は分かるでしょ?」
こくり、と小さく頷いたあと、「アバンチュール」って捨て犬みたいな細い声で言った。
「分かってたよ。ベッドいこっか」
まっかになって俺に手を引かれる貴方。
貴方が俺に委ねてくれるなんて好きになった頃は思いもしなかった。