第2章 僕が手品をがんばる理由
いつまでも手を離さない貴方を、いつまでも見つめていた。
どうしても貴方に不思議な世界を感じてほしいから。
貴方と2人で夢の中にいたいから。
貴方とめくりめく時間を過ごしたいから。
貴方の瞳に映して欲しいから。
薔薇色の世界を貴方と旅したいから。
だから、手品を頑張るんだ。
頑張れるんだ。
そう思った。
温かい貴方の手。
指先からゆっくり辿る。
貴方は逃げない。
右手で貴方を引っ張って、左手で抱き留めた。
「相葉さん...すき」
欲しいと思っていた勇気は、今はもう必要なかった。
貴方の手が、俺の首元に来た。
「ありがとう...にの...」
貴方の声は震えていて、瞳は湿っぽかった。
「ほら」
唇を突き出してやると、貴方は少し躊躇ってからふんわりと唇を重ねた。