第2章 僕が手品をがんばる理由
思い切り脚を引っ張られたような、そんな嫌な感覚。
一瞬で開いた目に映ったのは貴方じゃなくて天井だった。
瞼をゆっくり閉じる。
そっか。
夢を見たんだ。
貴方の夢を。
あの唇にキスしなかったのは、触れる事が出来なかったから。
裾を掴んだ俺の手が湿っていたのは、まだ手の中に俺の欲望が残っていたから。
貴方が熱を吐き出したと手で感じたのは、俺が手を握りしめたから。
左手は固く握られていた。
指と指の間に白く粘ったものが張り付いていた。
ティッシュを足で引き寄せて2枚取った。
夢なんて、所詮自分の理想。
ティッシュをゴミ箱に投げようとしたけど、もし入らなかったら貴方に見られてしまうと思ったからやめた。
もう1枚ティッシュを出して、丸めたものを包んだ。
理想でもよかったんだ。
貴方を快楽へ導く為に、勇気を出せた。
貴方は感じてくれた。
すきだよって言ってくれた。
俺が言う前に。
ごめんね。