第2章 僕が手品をがんばる理由
どうしても貴方の心には届かない。
そりゃそうだ。
俺が必死になって隠しているから。
いつか貴方に言いたい。
好きですって。
俺のこと好きになってくださいって。
付き合ってくださいって。
貴方のような、勇気を持った強い男になりたかった。
「いつ…いえるかな…っ」
そこには苦笑が含まれていた。
上下する手が加速度を上げていく。
俺は、たくさんの貴方を思い出した。
今日の貴方、この間の貴方、5年前の貴方、初めてレギュラーが持てた頃の貴方、まだデビューする前の貴方…
そしていつかのシャワールームで掴んでしまった貴方の感触が唐突に、鮮明に蘇る。
「くっ…ふ、」
吐き出されたそれさえも俺を馬鹿にしている様に思えてくる。
いのちを繋ぐことも出来ないでただ捨てられるだけ。
俺は掌を見つめてそうやって見下した。
呼吸が荒かったから、喉が痛かった。
5分もしない自慰のあとに残ったのはそれだけ。