第2章 僕が手品をがんばる理由
貴方が一度肩に掛け、床に置いた鞄。
それを壁のフックに掛けた。
「お風呂借りるね。なんかスウェットとかない?」
「おっきめのあるよ。しょーないから貸したげる」
「にのちゃんおっきいの着んの?」
「服の締め付けから逃れたい時だってあるんです」
嘘。
本当は、こういう事が起こった時の為に買ってあった。
「ふふ…へんなの」
多少強引な嘘でも貴方は信じてしまう。
「ほら入ってきて。俺もあとで入るんだから」
新品のスウェットを貴方に押し付けた。
「えっじゃあ一緒に入る!?」
「ばっ…」
多分、勃っちゃう…
「入ろうよー、身体流してあげるよ?」
「子供じゃないんだから。早く入ってきなさい」
本当は、身体を洗ってほしいけど。
「ちぇ。今度ね」
貴方はそう言って脱衣所に入った。
「ばーか」
そう吐き捨ててみる。
また泊まりに来てくれるの?
期待していいの?
既に閉まった脱衣所の扉をじっと見つめた。