第2章 僕が手品をがんばる理由
「やっぱすごいね。じゃあ、そろそろ帰ろうかな」
「あぇ、帰んの?」
泊まりたい、と言うと思っていたから、焦って噛んでしまった。
「うん。もともとそのつもりだったし」
でも、貴方は気づかなかったからほっとした。
いかないで
泊まってけばいいじゃん
それが出なくて。
貴方は荷物を整理し始めた。
どうしよう。
こんなこと今までなかったのに。
頭の中がぐるぐるする。
「あー…」
何を言われるんだろうか。
ぐるぐる。
「やっぱ、泊まっていい?」
その言葉で、ぐるぐるがすうっと引いていく。
ミラクル雅紀。
貴方の前では、奇跡なんて容易に起こり得るらしい。