海賊の医者は美しい瞳の少女に魅了される【ワンピース】
第4章 少し寄り道
そして、事は起こった。
この船の楽観主義の女船長ソラと、慎重な船大工のライトの間で起こったことだった。
ある日海軍との衝突で、ライトが重症を負った。
三日後…
この船は、食糧危機に陥っていた。
残り一食分、という時に海上で出会ったのは小舟で船を進む、幼い兄妹だった。
「お姉ちゃん、食べ物ない?」
震える妹を支え、勇気を奮い立たせて問いかけた兄。
その姿を見て、ソラは迷わず2人に一食分の食糧を与えてしまった。
「少なくってごめんね」
「ううん、ありがとう!」
兄妹は両親を探す旅に出ていたところ、途中で食糧がなくなってしまい、餓死寸前だった。
小舟が遠ざかる頃、船内で寝ていたライトが起きてきた。
「ライト…もう大丈夫なの?」
「あ、ああ。それより、飯はあるか?」
「食材なら、もうない」
カイが口を開く。
「は…?また計画性なく飯食ったのか?」
ライトは、幼い兄妹と出会ったことも、食糧危機だったことも知らない。
「だからいつも言ってるだろ…少しは考えて行動しろって!」
いつも自由奔放なソラに、ライトはついに堪忍袋の緒が切れた。
「それならライトがいるから私がちょっとくらい計画性なくったって問題ないでしょ!」
ソラも、誤解を解くのも忘れて言い返す。
「俺がいなくなったらどうするつもりだ」
「それは………」
ソラは一瞬答えに詰まったが、カシュの肩を抱き寄せ、言い放った。
「か、カシュがいるからどうにかなるよ!!」
ムキになって叫ぶ。
「ちょっ…俺を巻き込まないで!」
「そうかよ」
ライトは吐き捨てるように言い残し、部屋に籠った。
心が、読めるはずなのに。
通じるはずなのに。
この時から、ライトの心だけは読めなくなった。
2日後、次の島に着き、食糧も確保できた。それでも、ライトは部屋から出てこない。
いくらケンカ中だからといって、心配にならないわけはない。
「ねぇ、ライト…」
そっとライトの部屋の扉を開ける。
整理整頓が行き届いた部屋。実に、ライトらしい。
そしてソラはあまり広くない部屋の入口で立ち止まって、部屋の中央を見た。
「ライトッ!」
そこにはライトが倒れていた。
彼に駆け寄り肩を揺さぶる。息はある。
「ライト!ライト!?」
死んでしまうのではという考えが頭を過り、恐怖を覚えた。