海賊の医者は美しい瞳の少女に魅了される【ワンピース】
第4章 少し寄り道
それはそれは無愛想で人見知りの、町一番の店で働く長身の料理人、カイだった。
彼には料理を教え、育ててくれた恩人がいた。
しかし……
「放せ!放してくれ!!俺じゃない!俺じゃっ……」
「師匠っ!!」
その人はカイの眼前で無実の罪により海兵に殺されてしまう。
それは幼かったカイの目に残酷に映り、以来、人が信じられなくなってしまった。
道端で、そんなカイの料理を振舞ってもらったソラは、目を輝かせた。
「すっごく、美味しい!!ありがとう!」
たったそれだけの言葉。
それでも、感謝されたことも褒められたことも幼少期以来なかったカイは、仲間になってほしい、というソラの願いを無下にすることはできなかった。
「ね、行こう?あなたの料理の腕と、あなた自身が、欲しいの」
ソラなら信じられると。
ソラが信じる者のことならば自分も信じることができると。
そう、思った。
カイは、この船のコックとなった。
4人目の仲間は、小さな科学者だった。
20つ目の島で出会った、孤独な少年、カシュ。
その島の者は、誰一人としてその子を保護してやらず、存在すら認められない。
何故ならその子は、能力者だったから。
全てのことを独学で学び、それを利用して生きてきた。
「あなた、家族は?」
そんなカシュに、両親以外で唯一話しかけた人間。それがカシュの仕掛けた罠にかかった、ソラだった。
「なんで、俺に話しかけるの」
カシュは、それが不思議でならなかった。
両親が海難事故で死んだあと、生きることさえ認められなかった。
「お前は、生きてちゃいけねぇんだ」
「両親と一緒に死ねば良かったのに」
「お前なんか、俺たちに近づくんじゃねぇよ」
そう、言われて生きてきた。
それなのに…
「この罠、あなたが作ったの?」
「そう…だよ」
初めて、質問された。
「凄いわね!」
「えっ」
初めて、褒められた。
「なんで、そんなふうにいうの」
わけが、わからなかった。
「あなた賢いはずなのに、そこだけ馬鹿なの?」
「なっ!?」
「私が話しかける理由も全部、私が話したいから。それだけよ。」
初めて、話したいと言われた。
「ねぇ、あなた、私の仲間にならない?」
「うん」
自然と、頷いていた。
孤独な少年は、この船の科学者となった。