海賊の医者は美しい瞳の少女に魅了される【ワンピース】
第4章 少し寄り道
ローside
マリィを見ると、何故か幸福感溢れる表情をしていた。
「…?」
するとマリィが、おもむろに口を開く。
「夫婦みたいだね、なんか。」
“夫婦”か。
夫婦と聞いて、思いつくのは両親のこと。
医学を教えてくれた父。
優しかった母。
仲睦まじい夫婦。そして、幸せな家族だった。
しかし…ラミが白鉛病で倒れたあの日から、俺の人生は変わってしまった。
「そう、思わない?」
俺の顔を覗き込んでくる、何より愛しい、無邪気な笑顔。
その笑顔を見ただけで、全ての負の感情は跡形もなく消えていく。
「…ああ、そうだな。」
「ほんとにそう思ってる?」
マリィはすこし訝しげに目を細めるが、すぐに笑顔に戻って前に視線を戻す。
「でも、いつかそうなれたらなぁ………なんて。ふふっ」
マリィは前を向いたまま、いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「あ、お母さん!!」
少女が、見えてきた集落を指さす。
「え、どこどこ?」
「あそこ!」
俺達に気づいたのか、少し遠くにいた少女の母親は、駆け寄ってくる。
「ジュリ!心配したのよ!」
母親は俺の腕から奪い取るようにして、我が子を抱きしめる。
「お母さん!お姉ちゃんとお兄ちゃんがね、助けてくれたの!」
その言葉に、母親は目を見開く。そして、初めて俺達を見る。マリィを見て、さらに大きく目を見開いた。そして、呟く。
「神の愛子…」
その後、母親はハッとしたように踵を返し、帰っていく。
「また来てねー!」
それに対し、マリィは手を振った。そして彼女も踵を返した。その顔は、少し悲しそうに見える。
そんな彼女の、手を握る。
「どうにか、できないのかな。メルドと、あの人達の関係…」
……本当に、夫婦になる日が来たとして。
そんな幸せを破壊する…まるで、白鉛病のようなものが襲って来たとして。
その時、俺は……
マリィを…こんなにも大事なこいつを、守りきることができないかも、しれない。
先程のように武力でねじ伏せることが出来るものなら、勝てばいい。簡単な話だ。
でも、それができないのなら…命を捨てる覚悟も、ある。身代わりになることだって苦じゃない。
それも成せなかった時。
マリィを守りきることが出来なかった時は、俺が死ぬ時だ。