海賊の医者は美しい瞳の少女に魅了される【ワンピース】
第4章 少し寄り道
力の結晶…
「私は神の愛子ではないからな。紅導石の力を借りることで作り出すことはできるが……ほら、見てみろ」
ばあちゃんの手の中で、その石は端の方からゆっくりと光の粒と化していき、消えていく。
「結晶に込められる魔力は、生成者の能力が反映される。だから力の少ない者は、自らの力を実体化することはできない。」
「……」
俺はばあちゃんの言う、力の少ない者、だ。
「しかし、これを成すだけで、力は格段に上がる。」
でも…ばあちゃんに、これを頼んだのも俺だ。
「どうする?これは、お前次第だが。」
それを成すことで、力が上がるなら…
「やるよ、俺。」
「…そうか。」
ばあちゃんは少し片方の口角を上げると、紅導石に触れる。
再びこちらを向くと、俺の髪を頭を乱暴にかき混ぜた。
「紅導石には魔力を追加しておいた。当初の紅導石には劣るが…役には立つだろう。使ってくれ。」
ばあちゃんは俺から手を離し、先に洞窟を出た。
さらに3年、俺は結晶を作り出すことに専念した。
俺がその練習を繰り返すことで、洞窟には魔力が散った。
そして、その甲斐あってか、米粒程度の結晶なら作り出せるようになった。
しかし、それでも一瞬にして消えてしまうし、ばあちゃんの結晶のように光を放つこともない。
やはりいくら頑張ったとしても、所詮『忌み子』か…
俺は諦めてかけていた。
そもそも、ばあちゃんでさえ小石程度の大きさ。
俺がそれ以上になれるはずがない。
ましてや、その域に達することもない。
これは、最初から無理な話だ、と。
俺はそれから3年間、毎日洞窟に赴いてはいたが、同じ年月でも、かける思いは全く違った。
最初のような情熱もなければ、できなかった時の悔しささえ無い。
まるで意味の無い月日が流れていたように思う。
ある日突然、村から普通の聖目族とは段違いの魔力を感じ取るまでは。
過去を思い返し、自嘲の笑みを浮かべる。
こんなにも容易く自分の気持ちが変わるなんて…
彼女は、思っていたよりも、強く、気高かった。
『知りたい』と言った、マリィの真剣な目が、頭から離れない。
きっと俺は、彼女のようにまっすぐな想いを持ったことはなかった。
だからか、俺はマリィを、尊敬しているのかもしれない。