海賊の医者は美しい瞳の少女に魅了される【ワンピース】
第4章 少し寄り道
「それでも、『神の愛子』なだけあって、少しずつ力が戻っていってると思う」
「じゃあ母さんは、もともとここに住んでいたの?」
「そう。あんた、本当に両親からなんにも聞いてないんだね」
母さんの、昔の話。以前、気になって聞いたことはあったけど、全く教えてくれなかった。
「仕方ないから、あんたの母親のことで俺が知ってる限りのことは教えてあげる」
37年前。聖目族の里に、紅い瞳を持った女児が産まれた。その子は、聖目族の中で一番の強い力を持ち、成長した。
そしてその少女には3つ下の妹が産まれた。
『神の愛子』とされる姉に対し、妹は平凡。それでも妹はどのような場面でも、自分より遥かに勝る姉を深く敬愛した。
マリィの母(リラ)side
私が産まれて13年。事件は起こった。街とは山を越えた島の反対に位置していた聖目族の里に、『神の愛子』の話を風の噂に聞いた、海賊が襲ってきたのだ。
「『神の愛子』を出せ!!!」
「出さなきゃ、てめぇらを殺す!」
「逃げて!!」
「殺される!」
その海賊は、『神の愛子』…すなわち私を求め、大暴れし始めた。それに、聖目族の民も応戦する。
「リラ!あいつらの狙いはお前だ!早く逃げろ!」
「でも、私が逃げればみんなが…」
「早く!サラを連れてお逃げ!!」
母に叫ばれ、窓から崖の方へ逃がされる。
妹の手をとり、崖へと走る。
「姉ちゃんっ!お母さんが…!みんなが…っ」
「大丈夫だよ!きっとみんななら勝てるよ…あんな海賊なんか…」
そう、きっとみんななら…
待って
違う
違うよ…
『神の愛子』は私なのに、みんなが闘うのは違う。
危険な目にあうのはおかしい。
こういう時、みんなを守るのが『神の愛子』の役目なんじゃないの?
こんな時、私が逃げてちゃ駄目だ。
「姉ちゃん?」
サラが、突如立ち止まった私を不思議に思って問いかける。
「ごめん、先に洞窟に行ってて。後で必ず迎えに行くから」
「え、でも…姉ちゃん…?」
サラの橙色の瞳が不安気に揺れる。
「必ず、迎えに行くから。」
私は安心させるように繰り返すと、来た道を全速力で走った。
「母さん!!」
戦場に、母の姿を見つける。
「リラ!?なぜ戻ってきた!」
「お願い、私にも闘わせて!」