海賊の医者は美しい瞳の少女に魅了される【ワンピース】
第4章 少し寄り道
「あれ、全然思い出せない…」
「だから、そこらへんの事情について説明してあげるって言ったでしょ」
「…わかった。お願い」
「そこ、座ってて」
私は、申し訳程度に敷かれた敷物に座る。
彼も、私のその正面に座り、私とローにお茶が入っていると思われるティーカップを差し出す。それを一口啜ると、ほんのりとお茶の香りがする、白湯だった。
「何から聞きたい?」
「えっと…たくさんあるけど、まず…あなたの名前を教えて」
「俺の名前?」
「うん」
「そう、わかった。俺はメルド」
「ご両親は?」
「父さんは、会ったことない。母さんは…死んだ。」
母さんが死んだ、ということは、母さんの妹ね…
「何があったの?」
「後で、言う」
「わかった…ごめんなさい、こんな質問。」
「いや、教えるって言ったのは俺だから」
「えーと、あとは…」
「その石のこと、聞きに来たんじゃねぇのか?」
ローが私の手の中の石を指す。
「あ、そうだった。」
「それが何か、知りたいんだよね」
「うん。頼んでいい?」
「ばあちゃん、ちょっと洞窟行ってくる」
「気をつけろ」
おばあちゃんの言葉を背に、私達3人は家を出た。
「メルドはここによく来るの?」
言葉が響く。
「毎日来てる」
ここは家の裏にあった崖の中に空いた穴を、地下に進んでいくとたどり着く通路。その通路の壁には、色とりどりの石がたくさんあって、その数と大きさは進むほど増していく。
その通路を進んでいる最中。靴音だけが響く張り詰めた空気に限界を感じ、話題を切り出すと意外な言葉が返ってきた。
「何をしに?」
「…練習」
「練習?練習…って何の……わっ!」
私は突如、ローに肩を抱き寄せられる。
「え?なに?ロー………あ…」
気づかなかった。メルドがあまりにも普通に進んでいくから。目の前に大きな隙間があって、私はそこに足を踏み出し、落ちそうになっていた。
「ごめん、話に夢中で気づかなかった。ありがとう、ロー」
彼の手に私の手を添えて、笑顔を向ける。
するとローは、もう片方の手で私の頭を撫でてくれた。
「気ィつけろ」
「ねぇ、そういえばさ…」
「ん?」
「マリィはそいつと恋仲なの?」