海賊の医者は美しい瞳の少女に魅了される【ワンピース】
第4章 少し寄り道
「そっ。これが何か知らないわけ?『神の愛子』のくせに。聖目族の頂点に立つ…姫のくせに」
そっか…『神の愛子』ってそういうことなんだ。聖目族の中で一番強い力を持つ、『神の愛子』…それは一国の姫と同等の力とそれを行使する権利、そしてその影響力をもっている…
私はそんなこと、知らなかった。それだけじゃない。聖目族についての全てのこと…地上のこと…両親が話さなかった、ということもあるけどそれ以前に、知ろうともしなかった。
「私は本当に…何も知らない。」
空島にいた時、自分が暮らしている狭い世界のことしか…いや、それすらも知らなかったのかもしれない。
「自分がどれだけ無知なのか、やっと分かったの?」
自分が無知なのは知っていた。でも、それでも少しは知ることができていたと、思っていた。しかしそれは、大きな思い違いだったみたいだ。
「うん。ありがとう」
「は?俺、なんにもしてないんだけど」
「ううん、あなたは教えてくれたから。」
私は俯いて、手の中にある青い石を見つめる。私の瞳と同じ、その色。今はなんだか、憎らしくて仕方ない。何故だか分からないけど。
「…教えてあげる」
「え?」
「その石のことも、過去にあったことも、俺が知ってることで、あんたが知らないこと全部」
「本当?」
「うん。俺の家、すぐそこにあるから」
彼は立ち上がり、歩き出す。
「ロー…」
「お前が好きなようにしろ」
「…わかった。行く。」
「見失うぞ」
私とローは、彼を追った。
彼の家は、街から外れた森の中にあった。
その家は、石造りの簡素な家だった。
その家のすぐ後ろは崖がある。
「帰ったよ」
彼が家の扉を開く。
そこには、一室の部屋の隅に簡単なキッチンがあり、小さなテーブルがその側にある。そして、老人が腰掛けている、木造のベッドがひとつある。
とても2人で暮らしているとは思えなかった。
「ばあちゃん、『神の愛子』」
「マリィか…?」
おばあさんの方へ近付く。
「どうして私の名前を…?」
「へぇ、マリィっていうんだ」
「はい、マリィです。初めまして。」
「初めまして、じゃないでしょ」
「え?」
「会ったことあるはずだけど」
「会ったことが、ある…?」
「お前、孫なのに会ったことねぇのか?」