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海賊の医者は美しい瞳の少女に魅了される【ワンピース】

第3章 新しい旅


ローside
「ロー。」
聞き慣れた声が聞こえて、顔を上げる。そこには、俺が必死になって探し回った女が、静かに佇んでいた。彼女の後ろには誰もいない。気配が感じられない。おそらく、気を使って船の中にいるのだろう。
「マリィ…!」
マリィは、おろされた梯子をつたって、船の下へ降り立った。
「あの…」
マリィは気まずそうに視線をそらす。
「ごめんなさい…」
「いや、あれは俺が…」
「一つだけ」
悪かった、と言う前に俺の言葉を遮る。
「一つだけ、聞かせて。」
「何だ」
次の言葉を待つ。
「あなたがさっき言った、惚れた女っていうのは」

「本当……ですか?…それとも、冗談、ですか?」
まっすぐ見つめられる。こいつに見つめられると、まるで心まで見透かされているような感じがする。
鮮明には見えない美しい瞳の色は今、どんな迷いも切り捨てたかのような澄んだ色をしているのだろう。
「本当だ。」
そのまま、事実を、思ったことを伝える。マリィは少しだけ目を見開く。
「ちょっと来て。」
マリィは、俺の手をとって森の中へ誘う。少し進んだ森の入口辺りで足を止める。そして…
ガンッ
「ったぁ…」
「おい、何してる!?」
突如頭を木に打ちつけた。
「ごめん。ちょっとこれを、ね」
言って、彼女が俺の眼前にかざしたのは真っ二つに壊れたサングラス。こいつがつけていたものだ。
「なんかロック式みたいでとれなかったから。」
振り返り、再び俺の目をみる。
「これで、ローの顔が良く見える。」
数秒、見つめあったまま互いに口を開くことなく、沈黙が流れる。その沈黙を先に破ったのは…
「あの本は…どこまで読んだ?」
俺だった。
「あの本って『ソラと海』?」
予想の斜め上を行ったであろう、俺の発言に目を白黒させながらも聞き返す。
「ああ」
「それなら、うん。まだ中盤だけど…200ページくらい?」
なんで?と、首を傾げる。
「そのへんは確か…」
「「仲間と勘違いで喧嘩して、決別する」」
「そうだったね」
マリィはしばらく考え込んでいたが、おもむろに口を開き、こう言った。
「私…みたいだよね。勝手に勘違いして。ローがあんな状況で冗談いう人じゃないって分かってたのに。」
彼女の目に溜まっていた涙が滴となって頬を伝った。

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