海賊の医者は美しい瞳の少女に魅了される【ワンピース】
第2章 次の島まで
その者は聖目族の中では『神の愛し子』と呼ばれていた。
なぜならその者は、神からの授かりものとしか思えないような力を発揮するからだ。その者の力が開花すれば、千の兵など一瞬にして消えてなくなる。それほどの力なのだ。しかし、どれほどの強大な力を持っていたとしても、体力は消費するし、力の動力源に秘められたものにも限りがある。それは、どの聖目族にも該当する。
たとえ、それが『神の愛し子』だとしても。
その事実は、無限の力などないことを物語っていた。
聖目族の人間はあらゆるものを読み取り、操る力を持っており、皆強いがどれほど強くとも珍しい少数の種族が人里で暮らすと存在や居場所を知られ、命を脅かされることは間違いない。
だから、マリィ達家族は空島に暮らしているのだ。
「…聖目族のチカラは簡単にいうと…読み取る力とか操る力かな。読み取る力は、人の感情や思い、未来や過去を読み取ることができる力。操る力は、物や人の心を操ることができる。」
「…なるほど。今の説明だとその力は目から来てるってことでいいんだよな?」
そう言い、ローは私の目を指さす。
「うん、私たちが力を使うときは目から力が放出されるの。
…見えないけど。」
「なんとなく理解した。」
私は何気なく窓の外を見てみた。もう、薄暗い海底にも少し光が差し込んでいた。
「夜が明けたみたいだよ。」
「ああ……飯、食いに行くか」
「そうだね」
私とローはベットから立ち上がって、部屋から出た。
ローはきっと話は終わったと思っているだろうけど、あともう1つ言っていないことがあった。
それは、『神の愛し子』は自分自身、つまり私だということだった。
ローは私が聖目族だと知っても、驚きもせず、自分のために使おうとしたりもせず、ただ1人の人間として見てくれた。それがすごくうれしかった。だから、私が『神の愛し子』だということも、そのうち伝えるつもりでいた。