第2章 貴方が一番 前編※
「おいジャン!一体何なんだよ!」
任務中だというのに、ジャンが急に俺の手首を掴んだかと思うと、影になっている狭い路地裏に連れ込まれた。
「…………」
ジャンの表情は影になっていて見えない。
「ジャン!ジャンってば……うわっ!?」
手首を引っ張られ、壁に押し付けられた。
左右ともジャンの腕に挟まれ、逃げ場がないことに気づく。
「……っ、離せっ……」
必死に抵抗を試みるが、びくともしない。
「…エレン……」
吐息まじりの低く囁かれたその声に、びくっと身体が反応する。
「…や……やだ………っ」
訳のわからない恐怖と混乱に、涙が溢れた。
「……怖がるこたねぇよ……安心して、俺に全て任せろ……」
ジャンの顔が近づき、唇を奪われる。
「んん…っ」
ぎゅっと唇を固く閉じ、せめてもの抵抗をするが、不意に唇を舐められ、驚きで開いた隙間に舌を捩じ込まれた。
「ふ…っ、んん…ぅ……っ」
引っ込めていた舌を絡めとられ、きつく吸われる。
ジャンの生暖かい舌が、俺の口内を翻弄していく。
入りきれない唾液が、顎を伝って落ちた。
朦朧とする意識の中で、俺は何故か兵長のことを考えていた。
兵長……兵長……、助けて…………