第5章 キスから始まるψ難
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「あの、お金は貯金から」
「あぁ、そういうのはいいよ。金なら腐る程あるし」
それは悪役の台詞ですよ、斉木さん。
「でも、」
「じゃあ、君の身体で返して」
「か、身体……ですか」
すぐそっち方面に向かうよね、斉木さん……。
斉木さんは私の首に留められた制御装置を見ながら、上機嫌に笑みを浮かべている。
自分の作った作品が完成して嬉しいのだろうか?年上なのに、可愛く思えてくる。
微笑ましく見ていると、斉木さんは「じゃあ早速身体借りるよ」と言い、私の横に座ってゴロンと横になる。
私の膝に頭を乗せて、所謂膝枕をしている状態になった。
身体で返してって、こういう事か!またいやらしい事かと思っていた私が一番浅ましい!
人生初の膝枕は結構恥ずかしいが、甘える猫のように顔を膝にスリスリしている斉木さんは、中々に可愛い。
思わずキュンとなる。
恐る恐るサラサラの金の髪を撫でてみると、斉木さんは嫌がらずに受け入れてくれたようだ。
「あー……、もう最高」
なんだかとても喜んでくれたようだ。
ーー数ヶ月後
「ねぇ、まだ無理なの?」
「は、ぁ……っむり、無理です、」
斉木さんから空中浮遊の制御装置を貰ってから、数ヶ月が経った。
今、私は全身に汗を滲ませて、床に突っ伏している。
「何回やっても、全然慣れないね」
「……努力、はぁ…っ、努力はしてるんですが」
「これじゃあ宝の持ち腐れだね。大丈夫、僕が毎日特訓してあげる」
「っ!!いや!毎日なんてイヤです!私
死んじゃいます!」
「我儘言わないで、ホラ立って」
「い、いやです……もう体力が、」
斉木さんは呆れたように溜め息をしながら、抵抗する私の腕を掴んで立たせようとした。
またアレが始まる……。
そう思うと、余計に立ちたくなくなるのだ。
「……ホントに君、運動神経ないんだね」
「分かったんなら、もう止めにしましょうよ~……」
私達は今、斉木さんの防音シェルターが入った研究室で、空中浮遊の制御装置を使って、空中で自由自在に飛べるように特訓中なのだ。
今までは、この超能力を隠しながら生きていたので、フワフワ浮く程度しか飛んだ事がなかった。