第5章 キスから始まるψ難
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「で、これは別の研究してたら思い付いた、対楠雄のテレパスキャンセラー。楠雄の超能力・テレパスでの脳内の干渉を遮断出来る優れモノだよ~ん」
「そ、そんな、事、」
「不可能な事は何もないよ。ふふ、着々と楠雄に勝つ為の準備が整いつつある。……あ、君の制御装置にもキャンセラー付けた方が良かった?でもさ、君ってすっごい顔に出やすいから、別に付けてもあんまり意味ないかな~と思って付けなかったよ。ゴメンネ」
なんかとんでもなく失礼な事を言われてる気がするが、それを上回る衝撃に頭がついていかない。
空中浮遊の制御装置が出来た?
制作開始から1ヶ月余り出来るなんて、誰が想像したのだろう。
楠雄くんの制御装置のモデルがあるからという前提でも、最低二年はかかると思っていたのに。
一から、一人で、1ヶ月余りで?
しかも、同時進行で『テレパスキャンセラー』を作ったなんて、もう頭がパンクしそうだ。
やはり斉木さんは天才だ。
努力なんかじゃ到底敵わない、次元が違う。
手が震える。また涙が出そうだ。
「じゃあ早速、ちゃんと制御出来るかどうか試して……、」
「斉木さんっ!!本当にありがとうございます!!仕事早すぎて死ぬほどビックリしましたが、斉木さんに作ってもらえたなんて、すっごく嬉しい!!空中浮遊の制御装置なんて、一体どうやって作ったんですか!?設計図を見せて貰ってもいいですか!?」
「うわー、ダルいくらいのテンションだね~」
「テレパスキャンセラーも、後でじっくり見せて貰ってもいいですか!?あーもー!何から聞いたらいいかも、分かりません!そうだ!私の制御装置、ちょっとだけ解体してもいいですか!?」
「ダメ」
デスヨネー。
ふぅ、一通り思いの丈を言ったら、少しは興奮が治まった。
荒い息を整えながら、一旦ソファに座った。
空中浮遊の制御装置が完成したのも、勿論凄く嬉しい。
しかし、斉木さんが私だけの為に作ってくれた物だと考えると、堪らなく嬉しい。思わずニヤニヤしてしまう程だ。
ん?待てよ、私だけの為に?
そうだ、これは恐らく私しか使用価値のないもの。斉木さんはたった一つ作るのに、どれだけ金額を投じたのだろうか。
考えただけで、相当な金額の筈だ。
幸い私にも貯金がある。貯金で返して、残りは少しずつ返していけるはずだ。