第5章 キスから始まるψ難
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「人や物を浮かばせるのは無理なんだよね?」
「私が持ち上げれば浮かびますが、浮力を持たせるのは出来ません……」
「うーん、じゃあアレの出番かな~」
「アレ?」
奥の部屋で斉木さんがガチャガチャと音を立てて、何かを探しているようだ。
暫く待っていると、何やらボディスーツのような物を持って出てきた。
もしや、アレを着ろと?
「あの、それ、私が着るとか……ないですよね……」
「え?君が着なちゃ誰が着るの?筋肉の位置とか調整したいから、僕が手伝わないといけないけど」
「……い、いや~……あのですね斉木さん、」
「え?え?まさかまた『無理』なの?超能力を自力でコントロールするのも無理で、僕が対策として用意したボディスーツを着るのも無理なんだ~。へ~」
くっ……グゥの音も出ない。
でもうら若き現役女子高生が、大学生の男にピッタピタのボディスーツを着せてもらうのはどうなのか?
犯罪の匂いしかしない……いや、婚約者だからいいのか?いやいやいやダメでしょ!!
婚約者とはいっても、好き合ってるワケじゃないのに、こういうのは、ちょっと……。
「じゃあ、君の超能力は何の使い物にならないものになってもいいのかな?」
「う、ぐぐ、」
「僕がここまで尽力してるのに?無駄にするの?」
「で、でも!!私がボディスーツなんて着たら見苦しいです!斉木さんだって見たくないですよね!?見るも無残な姿ですよ!!」
「めちゃくちゃ見たいけど」
「着ます!!……あ゛っ」
斉木さんの「見たい」に反応して、条件反射で返事をしてしまった。
斉木さんはめちゃくちゃいい笑顔をしてる。
ああ、もう逃げられない……。
その後、強制的に筋肉を動かすボディスーツを着て私の身体能力は格段に上がり、超能力の実験データを取る事が出来た。
これのデータを基に、人体を浮遊させる研究等を進める事が出来る。
……ボディスーツを着るのを手伝って貰った時、斉木さんの手の動きやら視線やらを気にすぎて、恥ずかしくて死にそうになったのは、記憶から消し去りたい。