第5章 キスから始まるψ難
.
しかし空中浮遊を利用した新たな研究や、『打倒斉木楠雄』を掲げる斉木さんに情報を提供するのなら、まずコントロールしなくてはいけない。
「はぁはぁ…、よし、私、いきまーす!!」
フワリ、
「うん。そこで身体を一回転させて、足で壁を……あ、」
ドンッ
「いたっ」
「ちょっと、そのまま行くとぶつかるから、右側に避け」
ガンッ
「あぐっ……」
「早すぎるから、身体の力抜いて、」
ガッシャーン!
「ハハッ全く上手くいかないね」
「……うぅ~!!やっぱりダメです!運動だけは、幼少期から努力はしてきましたが、唯一全く身を結びませんでした!!こうなったら斉木さん!何か運動神経が良くなる薬はないですか!?」
「ないよ。だって君の場合運動のセンスがないんだもん」
「……、」
踏んだり蹴ったりである。
ここ数ヶ月、週4くらいは必ず練習しているが、正直全くもって上達していない。
斉木さんが言うに、楠雄くんは赤ちゃんの頃から超能力でバイクに乗ったり、自由自在に空中浮遊でハイハイをしていたらしい。
一方で私は、幼い頃は空中浮遊をして天井にぶつかりまくっていた為、困った両親がお腹にリードを付けて凌いでいた……という逸話がある時点でお察しだ。
走ると何もないのに転び、縄跳びは2回目で必ず躓き、プールでは泳ぐと溺れていると勘違いされ、鉄棒の逆上がりは結局出来ず仕舞いだった。そう、私は究極に鈍臭いのだ。
「でも良かったよね~。見るからに運動出来なさそうなお嬢サマの見た目してて」
「……泣きますよ斉木さん」
「どんどん泣いていいよ、興奮するから」
もうこの人どうにかして。
しかしこの事態、どうしたものか。
今まで超能力を隠すのに必死で、試す事がなかったので、これ程までにコントロール出来ないとは……。
ジンジンと痛む頭を摩りながら、どうにか超能力をコントロール出来るような方法を模索していく。