第5章 キスから始まるψ難
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「キ、キスをして欲しくないのは……、その、そればかり思い出してしまって、研究の補助に支障が出てしまいそうだったので、」
「……そればかり?」
「ですから!……キスを、した時の事ばかり考えてしまうんです」
「……っ、」
私の言葉を聞いた斉木さんは大きく目を開いたかと思えば、ニコリと綺麗な笑みを浮かべた。
おお、ご機嫌が治ったようだ。
ホッと一安心した私は、緊張がほぐれてへにゃりと笑った。
「あーーもーー……なんなの?煽ってんの?」
「あ、煽る……?」
気に触るような事を言っただろうか?
また機嫌を損なわれたら大変だ。
何かしたなら謝ろうと口を開こうとしたら、斉木さんの顔が近付いてきた。
お互いの唇があと数㎝で触れる、という所でピタリと止まった。
少し早い吐息。仄かに上気した頬。
熱に浮かされたような瞳には、真っ赤な顔をした私が写っていた。
うう……どうしてここで止まるのか……。
一番恥ずかしい距離感だ。
「僕とのキスが嫌なのは、僕とのキスを思い出して、僕の研究の補助が疎かになるからって事だよね」
『僕との』『僕の』強調し過ぎじゃないですか?
「う、……はい」
「じゃあ、もっと僕の事しか考えられないように、もっと回数増やさないとね~」
「……はい。……え゛っ!?いや、そうじゃな、んんっ」
いつもの物凄ーく優しいキスかと思いきや、今日は最初から様子が違う。
私の唇を食むように、感触を確かめるように動いている。
終わりかと思いきや、舌先でツツ……と唇をなぞられて、思わずピクリと肩を震わせた。
なんか、マズくないかこの感じ。
私を抱き締めていた斉木さんの手は、背中やら肩やら色んな所をゆっくり触っていく。
触れられた所がどんどん熱を帯びていく気がする。
ああ、やはりこれはマズい。
「さ、斉木さんっ、やっ、止めて下さい」
グッと距離が近すぎる斉木さんの胸板を押すが、全くビクともしなかった。
「そんな抵抗のされ方されると、余計したくなるから」
「っ!」
うわぁああ!!耳元で囁くのはやめて下さい!!
声が耳に響いて、堪らなくゾクゾクする。声までイケメンとか、反則だ。
熱に浮かされて、頭がボンヤリしてくる。
斉木さんに「この先は本当に好きな人として下さい」と言って、離れなければ。