第2章 the last rain(鉢屋三郎)
なんて勝手な言い分だろう。
こっちはそんな想いはとうに捨てている。
だけど、
三年も……待っているだって?三年も連絡がないのか?
その間、文一つないのか?
いくらなんでもそれはないだろう。長すぎる。
いや、先輩にも何か事情があるのかも知れない……でも、文一つ、たった一言あるだけで椿も救われるだろうに。
このまま彼女を待たせ続けるのか?あまりにも残酷だ。だけど…
「…学園長のご依頼だとしても、それはお受けすることができません。私はもう、彼女には何の興味もございません。」
「三郎、三年というのは人の心を変えるのに十分過ぎる程の時間じゃ。椿君が誰を待ち続けているのか、わしは知らん。じゃがこのままでは、彼女はずっと待ち続けるじゃろうな。この先何日でも何年でも彼女は独りじゃ……もし本当に興味のない話であったなら、聞かなかったことにしてくれて構わん。」
「…お話が以上でしたら、失礼させて頂きます。」
「うむ、元気でな。また顔を出しに来なさい。」
「はい、失礼致します。」
学園長室を退出する。
学園長の前では平静を装ったが一人になった途端、腹わたが煮えくり返る。
待たせ続ける先輩にも、待ち続ける彼女にも。
学園長は一体俺に何の期待をしているんだ。
俺に何ができる?
彼女のためにできることなど、何もない。
その後は忍術学園を逃げるように出て、雷蔵と合流した。
港町にある長屋の一室、雷蔵がそこを借りていて俺は転がり込むように居座らせてもらっている。
「早かったね、どうだった?」
「ああ、元気そうだった。久しぶりに会いに行ってよかったよ。」
「……会えたの?」
「?だから会ってきたって…」
「違うよ。学園長じゃなくて………椿さんに。」
ああ何だ、雷蔵は学園長の話を知っていたのか。
一杯食わされたということだ。
「何で俺が?会う理由なんてないさ。もういいんだ。」
雷蔵の表情が暗くなる。
何だよ、もうどうでもいいじゃないか。
彼女との関係は終わったんだ。