第2章 the last rain(鉢屋三郎)
学園長からの依頼を雷蔵とこなし、再び忍術学園を訪れたのはそれから二ヶ月後のことだった。
今日の空は機嫌が悪いらしい。
雨が弱々しく降っている。
雷蔵は俺も一緒に学園に行くと言うと、不思議そうな顔をしていた。
ちなみに椿のことは話していない。
「雷蔵、先に学園長のところへ行っていてくれ。」
「え?三郎は?」
「ちょっと野暮用。」
雷蔵の止める声を背に受けながら、俺はあいつを探しに行った。
いつものように椿は食堂にいた。
俺を見つけると、嬉しそうに駆け寄ってくる。
「三郎!待ってたよ。来てくれるって信じてた。」
「ああ、約束しただろ?」
「うん!」
「椿、ちょっと来てくれないか?話がある。」
椿の手を取り向かったのは学園長室。
戸惑う椿をよそに、学園長に声をかけ障子を開ける。
中には学園長とヘムヘム、雷蔵に食堂のおばちゃんもいた。
なぜおばちゃんがいたのか謎だったが、俺にとっては都合がいい。
「三郎?椿さんまで?」
雷蔵の言葉を無視して、椿と並んで座る。
「学園長、食堂のおばちゃん、お話があります。実は……私、鉢屋三郎は椿さんと夫婦になりたいと考えております。」
「はぁ!?」
「あらぁ!そうなの?良かったじゃないですか、学園長先生。」
雷蔵は心底驚いた顔をして、食堂のおばちゃんは喜んでくれた。
椿はというと、真っ赤な顔をして俺を見ている。
「おぉ!そうか!いやー良かった。丁度食堂のおばちゃんとその話をしていたとこじゃった。椿君に縁談を持ちかけなくて済んだわい。」
「ええ、椿ちゃんにいい話があったのだけど、三郎君がいるならそっちの方がいいわよね。」
「ちょっと二人とも!私に内緒でそんなこと話し合ってたんですか!?」
「ちょっと三郎!僕はその話聞いてないよ!心配してたのに報告しろよ!」
椿は学園長と食堂のおばちゃんに食って掛かっている。
俺は雷蔵に詫びを入れた。