第2章 the last rain(鉢屋三郎)
彼女は俺の首に手を回し抱き寄せる。
体を密着させるように、狭いその中を一気に貫く。
椿の手に力が入り、苦しいくらいに俺を締め付ける。
彼女を落ち着けるように髪を撫で、こぼれ落ちる涙をすいとる。
「はぁ…はぁ…さ、ぶろ…くん……おねがい」
「ん?」
「もう、独りに…しないで……どこにも、行かないで…」
「椿……俺は、お前の側にいるよ。」
彼女が俺を見て笑う。
愛しすぎて、幸せすぎて、涙が出そうになる。
俺が彼女にしたことも、彼女を避けていたことも、椿は全て許してくれる。
いつだって椿は俺に笑いかけてくれる。
それがどれほど俺の心を癒していただろう。
彼女には敵わない。
俺は椿を精一杯愛してやる。
もう二度と諦めたりしない。
腰を動かし椿の体を揺らす。
初めこそ苦悶の表情を浮かべていたが、やがて溢れ出る蜜が俺を奥へと導く。
「あっ…んっ…はぁっ…さぶろっ、くん…んあっ」
「っ、いい加減…君付け、やめろよ」
「う、んっ…あぁ、さっ…さぶろっ…あぁっ!」
椿の啼く声は俺の耳を犯し続ける。
もう我慢が利かなくなって、激しく打ち付ける。
「はぁっ…あっ、さぶろ…んん!あぁっ!」
「……椿っ!」
そして俺は椿の中に欲を放った。
息の乱れを整える椿に口づける。
彼女の目に俺が写って、俺の名を呼ぶ。笑いかける。
「『弟』じゃないって、わかったか?」
「気にしてた?ごめんね。」
「バカ。俺がどれだけ傷ついたことか。」
「ごめんって。ねぇ、三郎。」
「ん」
「あのね……好きだよ。」
やっぱり彼女には到底敵いそうもない。
もう、それでいい。
椿が隣にいてくれるなら。
「…俺の方が、椿を好きだからな。」
二人で笑い合う。二年前には想像もできなかったことだ。
やがて椿は俺の腕の中で眠りにつく。
いつまでもこうしていられないのが惜しいが、早々に学園を出なくてはならない。
彼女を起こさないように支度をし、最後にまた椿に触れるだけの口づけをする。
「必ずまた来る。」
そう言い残し、その場を後にした。