第12章 月に映るは君の顔
「またお前の着飾った姿を見るのを楽しみにしている。」
「う、うん。」
仙蔵が離してくれると、目が合ったのは留三郎。
「お、俺は別にこいつらみたいにがっついてないからな。」
少し顔が赤くなって目を反らされる。
そうか、照れているんだ。
人が照れているとどうも、悪戯な気分になる。
さっきまで恥ずかしがっていたのに、椿は自分が流されやすい性格だったんだなと気付いた。
「留三郎…隙あり!」
「!?」
椿は留三郎に飛び付いた。
留三郎は行き場のない手で宙を掻いていたが、観念したように椿の頭を撫でた。
「…お前、すげーよな。」
「なにが?」
「なんでもねぇよ。」
椿が守りたいものを守るために、自分を犠牲にしても笑っていられることを褒めたのだが、顔を見ると気恥ずかしくなって誤魔化した。
「…いつまでくっついてんだよ。」
文次郎が抗議の声を上げる。
すっかり悪戯心に火が付いた椿は、文次郎を見て笑う。
「なに?文次郎もう一回して欲しいの?」
「なっ!?ばっ、バカタレ!そうじゃない!」
見事なまでに真っ赤に染まる文次郎。
「意外とムッツリだったんだな。」
「…欲張り。」
「そもそも、文次郎から始まったんでしょ?これ。」
「だから、違うと言ってるんだぁ!!」
椿はその様子が可笑しくてたまらなかった。
ここには笑い合える仲間がいる、助け合える仲間がいる。安らげる場所がある、心弾む日々がある。
逃げてきた人生に終止符を打とう。
これからは私が歩いていく軌跡。
だって世界はこんなにも色鮮やかなのだから。
「みんな、大好き。」