• テキストサイズ

【忍たま乱太郎】かぐや姫

第12章 月に映るは君の顔


今宵の月は半月。

また一人、月明かりの中を外へ出る。
聴こえてくるのは虫の音だけ。
またこうして月を見上げられるなんて、私は恵まれている。

天上の月、半分はきっと隆光の元にある。
二人で分け合ったの、それぞれの道を歩むように。
でも心配しないで。
月が輝けば、その姿が映り込むから。
もう私は独りじゃないよ。


「椿さん」


背中から聞こえた声。
心地よいその低音を、椿は知っている。


「…土井先生。」


振り返り彼を見上げる。土井は笑顔を見せてくれる。


「また月を見ていたのかい?」
「はい。…またって、まさか前の時見てたんですか?」
「うん、ごめん。」


歌を聴かれていたと、恥ずかしさがこみ上げてくる。
土井は申し訳なさそうに謝ると、椿の
隣りに立ち月を仰ぎ見る。


「…帰ってしまうかと思ったよ。あんまり月を見てるから。」
「いいえ、月を見れば会える気がしたからです。」


椿の気持ちを土井は理解することができる。
彼女がいなくなったあの日、同じように月に祈った。
届きそうで届かないあの月に、彼女が映る気がしたから。

椿が会いたいと願っていた相手は隆光だったんだ。
彼女はいつでも弟のことを気にかけている。それは多分、これからも変わらない。だけど、


「それに、私の帰る場所はここですから。」


椿はここで生きていく道を決めた。
もう二度と、竹森城の姫君に戻ることはないだろう。
学園長の言葉を借りるなら、忍術学園にとって彼女は必要な存在だ。
そしてそれは、土井にとっても特別な意味を持つ。


「ああ、そう言ってくれると嬉しいよ。…さっき言いかけたことなんだけど、」
「はい。」


「お帰り、椿さん。」
「土井先生…ただいま。」


何の飾りもない言葉を彼女へ贈る。
今はまだ、椿の帰る場所は忍術学園なんだ。
いつか自分の隣が、彼女の帰る場所になるように。
天上の月に、土井は願った。




━完━
/ 71ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp