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【忍たま乱太郎】かぐや姫

第12章 月に映るは君の顔


「利吉君、あのね…」
「つーまーりー、ノリだったと!いや~良かったなぁ!」

利吉はわざと大袈裟に言った。
椿は利吉が何を言わんとしているのかわからず、オロオロとするばかりだった。

「まあでも、椿さんからの『挨拶』は受け取っておきますね。」
「!?」
「なっ!?」

そう言って利吉は土井に見せつけるように椿に抱きついた。
椿は恥ずかしさと驚きで固まってしまっている。
土井からは彼女の表情は見えない。

「り、利吉君!椿さんが困っているじゃないか!」

そう言うのが精一杯だった。自分で自分が不甲斐ない。
利吉は椿の体を離すと顔を覗き込んで言った。

「名残惜しいですが、もう行かなくては。またあなたに会いに来ます。」
「は、はい。」

利吉はその場から姿を消した。
土井はボーっとしてしまっている椿の肩を揺すって呼び戻す。
彼女がこうなってしまうなんて、利吉はやはり侮れない。
三郎が宣戦布告をした時も上級生の反応から、椿に初日にした忠告は無駄だったと思い知らされる。

「そうだった椿さん。」

利吉の再来に驚き、慌てて椿から手を離す。

「デートの約束、忘れないでくださいね。」
「デート!?」

聞き捨てならない言葉を聞いた。
椿は笑顔で利吉に手を降る。
それだけを言いにわざわざ戻って来たのか。
今のは絶対にわざとやったんだろう。先手を打たれ、土井はため息しか出ない。

「土井先生?」
「はい。」
「あの、何かご用でしたでしょうか?」

そうだ、利吉と椿がいるのを見かけ、気になって盗み聞きしてましたなんて言えるはずがない。

「…椿さん」
「はい。」
「あのっ…!」

土井は次の言葉を口にしようとしたが、それを遮るように始業を告げる鐘の音が聞こえた。
言いかけた言葉をぐっと飲み込み、力を無くしたように項垂れる。

「…ごめん、授業が…」
「はい、そのようですね。」

土井は意気消沈でその場を去ろうとする。
その背中に椿は呼び掛けた。

「土井先生!」
「…はい。」
「お話、待ってますね。いってらっしゃい。」

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