第11章 帰る場所
「…なるほど、五年以下は弟と同等になるわけか。」
「……………いいんだ。俺には豆腐があるから………」
「兵助、ヤケ豆腐なら付き合うよ…」
不憫に思った勘右衛門が兵助の肩を叩く。
椿の発言によりショックを受けた三郎は、握った手を震わせ彼女を睨む。
「━━━っ!弟だとしても、俺は…諦めないからな!!」
そう言い放ち椿を抱き締め、その場から素早く逃げた。
その行動に皆は驚きを隠せない。
椿は突然のことに頭が付いていかず、固まっている。
「あら、青春ね。」
唯一、山本だけが楽しそうに呟いた。
「あ、そうか!」
乱太郎が閃いたような声を出す。
「なに?乱太郎。」
「今のってほら、私たちがさっき椿さんにしてもらったことだよ。」
「してもらったこと?」
「あ、そうか!『ありがとう』だ!」
一年は組の会話に生徒たちが反応する。
土井もそれにピンときたが、違うとツッコミを入れるより先に一年生同士が騒ぎ出す。
「なんだって!?は組の連中、そんなことを!?椿さん、僕にもお願いします!」
「僕も!」
伝七、左吉を筆頭に二年生、三年生、四年生が続く。
学園長室はかつてない混乱に陥った。
「こらぁ!お前たち、やめんかぁぁ!!」
山田、土井の制する声は虚しくもかき消される。
「はーはっはっは!これでこそ忍術学園じゃ!これからが楽しみじゃな、ヘムヘム。」
「ヘム。」