第11章 帰る場所
「ですがっ…!」
「隆光様を信じましょう。」
「!!」
椿の目から涙がこぼれた。
大粒の涙は次から次へと、とどまることなく流れ続ける。
「私は……私は、ここにいても……良いのですか?」
「この学園は…あなた一人がいないだけで、こんなにも活気が無くなるということを思い知らされました。竹森城の姫君ではなく、食堂のおばちゃん見習いの椿君が忍術学園には必要なんじゃ。どうか、戻ってきてはもらえんかの?」
なんて温かい言葉だろう。
初めて会った時のように、いとも簡単に自分を受け入れてくれる。
周りの皆を見回す。穏やかに微笑むさまに、懸念が払拭される。
人に必要とされる、自分の存在を認めてくれる、こんなにも心を解きほぐすということを初めて知った。
「!!━━━━学園長先生!!」
椿は学園長の元へ駆け寄り、すがるように何度も感謝の言葉を述べた。
不安な顔つきだった一年生は喜びを爆発させ、誰もが安堵の表情を見せた。
「やったぁーー!!」
「椿さん、お帰りなさい!」
「戻ってきてくれて良かったー!」
皆の言葉に椿もようやく彼女らしい笑顔を見せた。
それは竹森城の姫君のものではない。
忍術学園、食堂のおばちゃん見習いの顔だった。
「皆ありがとう!学園長先生、私忍術学園が大好きです。ここに帰ってこれて、本当に良かった。ありがとうございました!」
「ふむ、やはり忍術学園はこうでなければならん。椿君も大切な職員の一人ということじゃ。」
「はい!」
和やかな雰囲気の中、山田が椿に問いかける。
「ところで、椿さんが我々忍に対して抵抗がなかったのは、神室さんの存在があったからだね?」
「はい、隠すつもりはなかったのですが、不審に思わせてしまってすみませんでした。」
それに続き、安藤が疑問を口にする。
「しかし、なぜ外出を嫌がっていたんだ?もしかして最初から監視者の存在を知っていたのか?」
「それは、教えてもらったんです。鉢屋三郎君に。」
「…え?」
突然自分の名が呼ばれ、三郎は訳がわからない様子だった。