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【忍たま乱太郎】かぐや姫

第11章 帰る場所


翌朝、伊作が持ってきてくれた朝食を一人で食べていると、懐かしい複数の足音が聞こえてきた。
食堂のおばちゃんから、私が起きたことを聞いたのだろう。

この音はきっと、あの子たち。

「椿さんっ!!」

ほら、当たり。
来てくれたのは一年は組の良い子たち。
皆泣きそうな顔で私の元へ駆けつけて来てくれた。

「体大丈夫ですか?」
「痛くない?」
「いっぱい心配しました!」
「椿さんがいないとダメです。」

「うん。皆ありがとう。心配かけてごめんね。」

一人一人を抱き寄せながら、お礼と謝罪を繰り返す。
また皆に会えて良かった。

でも、きっとこのあと起こることも私にはわかるんだ。

「お前たち!保健室で騒ぐな!」

ほら、やっぱり。
展開がわかってしまって、それが可笑しくてつい笑ってしまう。
皆が不思議な顔して見てる。

「!椿さん…」

あぁ、私帰って来たんだなって思える風景。

「…と、とにかく!大勢で迷惑になるから戻ってなさい!」

一年は組の皆は土井先生に怒られて元気に退散していった。

「すまなかった、うるさくて。体は大丈夫かい?」
「はい、起きるぶんには平気です。」

土井先生は顔を綻ばせる。
私は先生を手招きして呼ぶ。
土井先生は近くに座ってくれた。

「はい、先生。」
「…え?」
「皆にもしたから、来て下さい。」

両手を広げて待つと、土井先生は真っ赤な顔になってしまった。
あれ?ダメだったかな?
そう思っていたら、土井先生は私を恨めしそうな顔して見て、他意はないからと言って私の方が抱き寄せられてしまった。


彼女が両手を広げて来いと言ってきた時は、一瞬で頭の中が混乱を起こした。
彼女が重傷を負い、意識の戻らない日々が死ぬほど辛かったのに加え、私が椿さんを特別に想っている気持ちを知ってか知らずか、彼女のその行動に無駄な抵抗を顔にする。
彼女はきょとんとしてやはりわかっていなかったから、悟られないように私は彼女を抱き寄せた。

初めて胸に抱く彼女の体は細くて頼りなくて、だからとても大切な壊れ物に触れるように優しく包んだ。
この行為は彼女なりの感謝と謝罪なんだ。

だけど今だけ、少しだけ自惚れてもいいだろうか。
誰もがいないこの瞬間を、彼女が選んでくれたことを。

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