第10章 過ぎ去りし時の回廊
『本当に、行ってしまうのかい?』
『はい、自分の思うように自由に生きてみたいと思ったのです。お二人には今まで本当にお世話になりました。ありがとうございました。』
『あんたさえ良ければ、ずっと家にいてもいいんだよ?私らは子供がいないから、あんたを本当の子供のように思ってたんだがね。』
『御心遣い、感謝申し上げます。ですが、もう決めましたので。』
『そうかい…それなら止めても仕方ないね。道中気をつけて。』
『これを持って行きなさい。お腹が空くだろうからね。』
『ありがとうございます。お二人とも、どうかお体にお気をつけて。』
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『椿様』
『神室か、何だ。』
『隆影様が椿様を探しておられます。この場も、もうまもなく桧山がやってくるでしょう。どうかお逃げください。』
『父上が…とうとう私を道具として使う時が来たか。』
『恐れながら…。私に妙案がございます。』
『申してみなさい。』
『この山を越えた更に山の奥、忍術学園なる忍の学舎があるとの噂です。桧山の手を逃れるには都合の良い隠れ蓑かと。』
『忍術学園…』
『……』
『神室、今までご苦労だった。これより先は国の外。お前は城へ戻りなさい。私一人で行く。』
『椿様!』
『神室、お前の働きがあったからこそ、私は自由を手に入れた。ありがとう。元気で!』
『椿様!…神室はいつまでも椿様の味方にございます!どうか、お気をつけて!!』
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