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【忍たま乱太郎】かぐや姫

第2章 月はまだ見えない


「はい、長い間男物を着ていたので、こっちの方が慣れているんです。」
「え?」
「あ、その、実は諸国を旅するのに男物の方が動きやすくて…」


恥ずかしそうに彼女が微笑むのに、思わず見とれてしまった。
確かに女の一人旅なんて危なっかしくて仕方ない。この歳で身寄りもないようだし、彼女も大変な苦労をしたことだろう。


「土井先生?」
「!あ、いや、それなら別にいいんだが…」


一つの仮説が脳裏を過る。
彼女は危険だ、ある意味。



「…で、こっちに各学年の教室があります。まあ、ほとんど立ち入ることはないと思うけど。」


他にも倉庫やらがあるが、火薬や危険な武器、生物がいるため近づかないように念を聞かせる。
土井の説明を椿は熱心に聞いていた。
「わかりました。」と素直に受け入れる彼女に、少し違和感を覚えたが、次の言葉に土井の脳内はフル回転することになる。


「あの、最上級生って六年生ですよね?六年生は歳はいくつになるんですか?」


何故、何故六年生が気になるのだろうか?先程浮かんだ仮説が一歩前進してしまう。
食堂で働くのだから、学園の全員と顔を合わせることになる。それは仕方がない。ただ、生徒達が彼女を放っておくわけがない!特に五、六年に気に入れられると厄介だ。同じ男として、土井にはそれがわかってしまう。


「え、と、六年生は十五才になるけど…どうして?」
「…そうですか!ちょっと聞いてみただけです。」


土井はその心の内を、決して顔には出さずに聞いた。
椿は少し考えてから嬉しそうに答えた。
土井の心に早くも黄色信号が灯る。



教員が寝泊まりしている長屋の空いていた一室を、自室として借りることになった。
困ったことがあったら自分を頼るように、それと上級生にはくれぐれも気を付けるようにと、土井は自分の部屋を教えて去って行った。
部屋に一人残されると急に体の力を失ったかのように、へなへなとその場に座り込む。
ここまで来るのに相当気を張っていたのだ。震える自身を抱きしめうわごとのように大丈夫を繰り返す。

よし!と気持ちを切り替えて、自分の荷物、と言っても着替えくらいしかないがそれを片付け、再び食堂へ向かう。
今日の夕食からここで見習いとして働くのだ。
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