第8章 作戦開始
神室という男、忍装束に身を包んでいるが、やはり見かけたことのない男だった。
顔の半分を隠しているため素顔はわからないが、その目には必死さが感じられる。
土井の言葉に神室は安堵の表情を浮かべた。
「…そうですか。あの方がそう望まれるなら、私も協力させてもらいます。ここを破壊する術を私は知っています。」
「!?あなたは一体…」
何者かの気配を感じ、土井は身構えた。
そこに現れた冷たい目をした男。
「…桧山!!」
「…神室サン、予定が狂いまくりですよ。全てあなたのせいです。こうなったらあなたは、私が殺して差し上げます。」
桧山が神室に向かい足を踏み出す。土井は咄嗟に二人の間に入り、桧山の攻撃を受け止める。
桧山はまるで、土井など見えていないかのようだ。
「ええい!邪魔だ!!カムロ!貴様はいつも私の邪魔をする!憎い!憎い!貴様さえいなければ!!」
土井とぶつかる桧山。力では桧山のほうが土井を上回っていた。
受け止める苦無は何度も弾き飛ばされる。
そこへ飛んでくる縄鏢。寸ででかわす桧山。
別の方向から近づく影、上段斬りつける。桧山それをかわし腹部へ回し蹴り。後ろへ飛び退きかわす。桧山体勢を戻し苦無がぶつかる金属音。
「小平太!長次!」
やってきたのは奇襲班の二人。
長次は土井に城内部を制圧したことを伝える。
小平太が桧山を押さえているが、体格差もあり長時間は持たない。
「私に桧山を任せてください。彼では荷が重いでしょう。それからあなた方はすぐに崖の上に待避を。ここを破壊します。必ず上へ上がっていてください。」
土井は神室に向き直り問う。
「あなたが我々を傷つけない保証はありますか?」
「椿様に誓って、あなた方に危害は加えない。約束します。」
「…その言葉、信じますよ。」
土井は神室の拘束を解いた。神室は土井に礼を言うと桧山目掛けて飛び出した。
小平太が土井の元へ戻る。土井は二人に、陽動班狙撃班と合流し崖上へ待避するよう指示する。
「あの人は?」
「椿さんの関係者だそうだ。彼女の元へ連れて行く。二人は急いで皆に伝えてくれ。」
「はい!」