第7章 狙われたのは
「山田先生、これは……」
「そう、変なんだよ。見たところ奴らはまだ準備が整っていない。今椿さんを拐ったところで、我々と争うには時期尚早という感じだ。ただの誘拐目的でこんなものを建てるとも思えんしな。」
「私たちには都合がいいですがね。」
準備の整っていない敵陣地、椿を拐ったことで忍術学園が追ってくることは明白なはず。
一体何故?
「こうは考えられませんか?椿さんを餌に我々を誘っていると。」
利吉の言うことも十分考えられる。
椿が忍術学園を誘き出す餌ならば、あの時狙われたのは乱太郎たちの可能性もある。
「ということは、狙いは別にある可能性がありますね。」
「山田先生、もし奴らが忍術学園を狙っていることが本当だとしたら…?」
「その時は…わかるだろ?」
山田の言葉に全員が頷く。
「ではお前たちも休みなさい。ご苦労だったな。」
それぞれが椿の無事を祈りつつ、少しの間体を休める。
作戦開始まで、あとわずか。
小窓から差し込む月の光。
椿が目を覚ますと、あたりはすっかり闇に支配されていた。
唯一あの月だけが、優しく静かに浮かんでいた。
周りに人の気配はない。
あの忌々しい桧山も姿を現さずにいた。
本当に、私は父に取って使えない駒なんだろうな。
最初から捨てられていたんだ、今更何を惜しむことがあるだろう。
体がひどく痛む。身動きが取れないほどに。
乱太郎たちは無事に忍術学園に帰れただろうか。
おばちゃんのお使い、行けなかったな。
皆にも心配かけちゃってるかな。
ごめんなさい。
一筋の涙が頬を伝って落ちた。