第3章 歌声
「……で?」
「バレーをやろう!」
「やろう!」
キラキラした笑顔の小平太と椿。それに引き換え暗い顔でため息をつく六年生一同。
「でもバレーってどうやるの?」
「なんだ、知らないのか。要はこのボールの打ち合いだ。長次!」
小平太はボールを高く投げる。それを長次がトスで上げた。
「いけいけどんどーん!」
小平太が飛び上がりボールを打ち込む。とっさのことで身動き取れない椿の前に現れたのは留三郎。目がつり上がっている。
「バカか、小平太!!死ぬだろうが!!」
留三郎がボールを受け返す。椿は子供のようにはしゃいだ。
「すごーい!もう一回!」
「アホか!!あんなの取れるはずないだろ!!」
調子に乗った小平太がリクエストに答え、再度アタック。次に出てきたのは文次郎。
「バカタレ!よそ見してる場合か!」
「あ?誰がバカだと!俺はこいつが怪我しないようにだな!」
「ちゃっかりバレーに参加してるじゃないか!すぐにやめろ!」
「そういうお前も打ち返してんじゃねぇよ!」
「もう!二人ともボール回してよー!」
留三郎と文次郎が言い争いを始めると、椿は無謀にも間に入ろうとする。
「椿さん!」
伊作がボールを回してくれる。椿は見よう見まねで返した。
「そう、うまい!また返してみて!」
椿は楽しそうに伊作とラリーを続けた。レシーブ、トス、アタックと伊作が優しく教えてくれるので、椿はバレーの遊び方を理解することができた。
楽しい!
友達と遊ぶって、きっとこんな感じなんだ!
「ずるいぞ、伊作!私にも回せー!」
「なかなかやるな。」
輪から外れて見ていた仙蔵が、私も混ぜろと中に入ってくる。
七人はしばらくの間ボールを回し続けた。
「はぁ、はぁ、もうダメ~」
椿はその場に座り込んだ。だが、その表情は満足感に溢れている。
「ったく、大丈夫かよ?」
「なぁ、楽しいだろ!」
うん、と肯定する。息を整えようとして空を見上げる。
相変わらずの青い空に雲が静かに流れていった。
「ねぇ!」
椿が立ち上がり、六人が彼女に視線を集める。