第1章 中学
予想どうり、涼太は2軍から1軍に上がってきた
2週間のスピード昇格だ
おめでとうくらい言ってあげようと思って涼太に近寄ると
「りんっち、りんっち、スピード昇格っすよ!!やっぱオレ才能あるんすねぇ」
なんてなんの恥ずかしげもなく言うので、おめでとうの代わりに軽く腕を叩いた
「ったー!!なにするんすか!?」
さすがのリアクションだ
「ごめん、なんかムカついた」
「えー・・・、そこは『さすが涼太だね、おめでとう』って笑顔で言って欲しかったっす」
「・・・」
もう一発今度はそれなりの力を込めてお腹を殴ろうとしたら
さすがに嫌っすよなんて言われて片手でとめられた
・・・うぜぇ
部活終わり、更衣室から出るとまた涼太がいた
もう絶対あたしのこと待ってる、とか自意識過剰になるくらいの頻度なんですけど
「また、偶然?」
「偶然っすよ!!」
言い切るからそれ以上突っ込めなくなる
「・・・おめでとう」
会話がないから、しょうがないから、なんて自分に言い訳してそういう
涼太の顔をチラッと見てみると輝いていた
そんなに嬉しいのか・・・
「りんっちー、嬉しいっす」
「素直だねー」
「りんっちがオレが頑張ってるとこ見ててくれてたからこんなに早く昇格できたんスよ、たぶん」
それは、褒められてる?ん?褒めてるわけではないよね?
「だから一番におめでとうって言って欲しかったのにー。なんで腕とか叩くんスか!?結構ショックだったんスよ」
「あー、ごめんごめん」
「冷たいっすよねー」
「もう、おめでとうって言ったんだからいいじゃん」
「あの時の心の傷はまだ癒えていないっスよ」
「心の傷なんてないくせにー」
「こう見えてガラスのハートなんスけど」
「打たれ強いとか言ってたじゃんか」
「あ、しまった」
馬鹿だ、ほんとに
だからこそ楽しいんだけど
T字路の分かれ道で手を振る
「ばいばい」
「また明日っす」
お互い背中を向け合うように逆方向の道を歩いていく
「こんだけアピールしてるのになんて反応ないんスかね・・・」
金髪イケメンバスケ男子の呟きは、誰の耳にも届かず消えた