第1章 中学
どんな会話があったのかは知らないけど
あたしが買い出しから帰ってきた時には黄瀬君はもう入部したことになっていた
「待ってたっすよ、星宮っちー」
「わ、びっくりした……、入部できたの?」
ブイサイン作る黄瀬くん
「おお、おめでとう、よかったね」
拍手、拍手
「星宮っちが背中押してくれたおかげで決心できたんすよ」
「背中なんて押してないけど……、それにその#茶野#っちって何?」
「ああ、オレ尊敬してる人には、っちって付けるんスよ」
「えー、ちょっと……」
「え、嫌っすか!?じゃなくて、星宮っちがあんとき声かけてくれなかったら多分体育館の中は入れなかったっす」
「え!?情けなー」
見るからにショックを受ける黄瀬くん
わかりやすくて面白いなこの子
「と、とにかく星宮っちがいたから入部できたようなもんスよ」
「おー、それはあたしに感謝だね」
「感謝感謝っす」
わ、可愛い
かっこいいじゃなくて可愛いなのはなんでだろう?
「練習参加は明日から?」
「そう言われたっす」
「じゃ、ちゃんと来てね」
「わかってるっすよー信用ないんスか、オレ?」
「今日話したばっかで信用も何もないです!」
「きゃうん」
面白い
笑ってると、黄瀬くんも笑った
「じゃ、また明日っす」
「うん、またあしたー」
なんかいいな、この挨拶
また明日も会えるってなんかいいな
なんて思ったことは胸の奥深くに隠しておきましょう
あたしは何事もなかったかのように体育館の中に入っていった
「さつきー、買ってきたよ」
「わー、ありがとー」
可愛い、もうさつきになりたい
「そういえば黄瀬君がりんのこと待ってたよ?」
「あー、さっき会ったよ」
「恋の予感?」
そう言ってくすくす笑うさつき
「まっさかー」
この時はまだそう言って笑えた
「えー」
「そういうさつきこそ、大輝となんかないの?」
「だーかーらー、大ちゃんとは別にそんなんじゃないってー」
いつものやりとりに満足
「さつき可愛いから、彼氏ぐらい作ろうと思ったらいくらでもできるもんね」
「それを言うならりんだって、すごい可愛いじゃん」
「え、マジで言ってんの?」
「うん」
「ないない、それはない」
「えー、絶対あるよ」
黄瀬くんだって落とせるんじゃない?なんて笑うさつきに、あんた小悪魔かって突っ込んだ