第1章 中学
「テツくんの好きな物って何かな?」
「テツくんの誕生日っていつか知ってる?」
「じゃあ、テツくんの好きな女の子のタイプは?」
どうやらさつきはテツヤに恋に落ちてしまったようです
本当にわかりやすいなあ
苦笑しながら知っている質問には答えていく
「もー、テツくんほんとにかっこいい~」
テツヤがシュートを外すところを見てそう叫ぶさつきの目がちょっと心配になる
あれがかっこいいとは、流石に思えないな……
というか、今まであんまり話したことすらなかったはずなのに
恋って、そういうものなのだろうか?
「桃井っち、黒子っちのこと好きになっちゃんすね」
耳元で、囁き声
「わあ!?」
いつの間に隣にいたんだろう、びっくりした
テツヤ並みの気配のなさだったよ
「みたいだねー」
「黒子っちは気づいてるんスか?」
「さあ、……気がついてないかもね」
テツヤはそういうところが鈍い気がする
もしくはわかってても全くそれを表に出さないのか
「気づいてあげないなんて、黒子っちはひどいっスね」
「……?」
その言葉にやけに力が入っていた
りんっちも、なんで気がついてくれないんスか……?
なんて黄瀬が桃井を自分と重ねてたことに、りんが気がつくわけがない
りんは何も知らないまま微笑む
「さつきの恋、叶ったらいいねー」
「……そうっすね」
そういう涼太はこちらをじっと見ていて
「りょう、た?」
視線がやけに熱く感じだ
「どしたんスか?」
「や、……何でもない」
気のせいだったのかな
涼太が何か言いたそうに見えたんだけど
それを自分から聞く気にはなれなくて
なぜか聞くのが怖くて
首を振るあたし
涼太はまだ隣に立っている
なにを話すわけでもなく、ただじっと、あたしの隣に
視線だけ、あたしの方に向けて
……涼太?
目があった、微笑まれる
あれ?どうしたんだろう?
……かっこいい?
少し、早くなった鼓動を押さえつけた
気づかれたらいけない気がする
「オレのこと、ちょっとは意識して欲しいっす」
不意に、涼太の声
「え?」
そう言い残して早々と去っていく涼太
あたしはひとり呆然と立ち尽くして
普通の顔して練習に参加していく彼を見ていた
とくり、とくり
心臓の速さはまだ治らない