第1章 中学
近くにいた敦に、おれもいれてよー、なんて言われたから即承諾
というわけで、初めてこんな大人数で帰り道を歩いてる
「アイス食べたい~」
「いいっスね、紫原っち」
「コンビニ寄ってくか~?」
「向こうにあるのだよ」
「何か楽しいね、こういうの」
「ちょっと騒がしいけどね」
みんなに流されるようにコンビニの前へ
でもあたし今日お金持ってきてないんだよねー
そうさつきに言うとあたしもだよって返ってくる
そういうわけであたしたち2人コンビニの中に入らずみんなが出てくるのを待つことに
うう、なんか寂しいかも
「ねえ、りんはさ、きーちゃんのことどう思ってるの?」
「え?どうしたの急に?」
「ちょっと気になってるんだ」
「……どうって……」
「好きでは、ないの?」
「……」
よくわかんないよ
それが本音
「強くなって欲しいって、思う」
誰にも負けないくらい、もっと伸びていってほしい
「それに、バスケを嫌いにならないでって思う」
それは、ショウゴ君と涼太が戦った時に確かに浮かんできた
「そっか」
「うん」
さつきはなにか納得したような表情を浮かべていた
「ああそういえば、赤司君に聞いたんだけど、……灰崎君辞めたって」
「え!?なんで?」
「理由はよくわかんないけど」
「……」
コンビニの自動ドアが開く
みんながそれぞれ手に思い思いのアイスを持って出てきた
「りんっち~」
駆け寄ってくる涼太、その手には2本のアイス
「これあげるっすよ」
「う?」
言葉とともに差し出される、バニラ味のアイス
「ありがとう」
受け取ると、涼太は嬉しそうに笑顔を見せた
「さつき、これ、一緒に食べよ?」
「いや、いいよ、りんが食べて?」
「でも、さつき……」
「いいから、ね?」
ためらうように、袋をあける
一口かじる、とても甘かった
「これ、あげます」
となりのさつきはテツヤからなにかもらっている
アイスの棒・・・?
さつきは一瞬怪訝な顔をして、その棒をひっくり返した
表情が明るく変わる
「さつき……?」
「ちょっと、行ってくるね」
そう言って嬉しそうにコンビニの中に入っていくさつき
だいたいわかった
「テツヤは優しいねー」
一人呟いてみた声は風の中に溶けた
もう一口、アイスをかじる
涼太と目があった
笑うと涼太も笑う
幸せだって思った