第1章 中学
ダムっとボールを付く音
1対1を見ているとやはり涼太はすごい勢いで成長してることがわかる
・・・それでも、まだ灰崎君にはかなわない
それはすぐにわかった
動きの速度も、技のキレも、パワーも
そして、勝負が終わって、涼太が負けて
床に手をついて、呆然としている時に
ガララとその場には不釣合な音と共に体育館の扉が開いた
そこには女の子がひとりたっていて
誰かが、あれ、新しくできた黄瀬の彼女じゃね?って声を漏らした
その言葉に知らずショックを受ける
ああ、彼女いたんだ
でもその女の子は灰崎君となにやら楽しそうに話していて
膝ついてる涼太には目もくれない
「・・・涼太」
あたしは涼太に近づく
なんて声かけていいかわかんないけど
何か言ったほうがいい気がした
なんかすごく涼太が小さく見えたから
「りんっち・・・」
顔を上げる涼太に笑いかける
「だから適わないって言ったじゃん」
「・・・いけるかなって思ったんスよ」
そういう声は力がなくて、少し怖くなる
敵わない力を目にして辞めていったプレイヤーも過去に何人も見てきたから
立ち上がった涼太に恐る恐る聞く
「・・・バスケ、嫌いになった?」
「まさか」
何言ってんスかと涼太
安心する、よかった
「だた、ちょっと・・・悔しかっただけっすよ」
大丈夫涼太はもっと強くなれる
そう思ったけどそれを言うのは無責任な気がして
ちょっと力を込めて背中を叩いた
「頑張ろう、まだ次はいくらでもあるんだから」
そう言うと涼太はちょっと目を見開いてそして笑った
「当然っすよ」
その笑顔に少し見惚れた
純粋にバスケを楽しむ強い笑みだった